安全・安心への取り組みの考え方
釣八の「品質管理者」としてお仕事をされていますが、社内でこのような役割・立場を明確にされるようになったのはいつ頃からですか。
2011年だったでしょうか。会社の取扱品目に加熱品や味付けした加工品が増えてきた時期で、社長の方針の下で品質管理や適正な食品表示を担うために社外のセミナーや勉強会に参加して知識や経験を積んできました。その後2015年には食品表示法が施工されてそれまでのJAS法、食品衛生法や健康増進法における栄養表示などの規則が一本化されました。私たちが取り扱っている水産食品の表示にも大きな変化が生じましたのでこうした対応が必要な時期であったと思います。
一方で委託先加工工場への工場監査の仕組みを作られていますね。
商社出身で中国にある食品工場の社長をされていた方が顧問として入られて2012年から開始しました。私もその方と同行し工場監査のセミナーを受講しながら経験を積んできました。
釣八の安全・安心に対する基本理念、品質管理者として臨む姿勢、これだけは絶対に譲れないこととはどのようなことでしょうか。
品質に対しては絶対に妥協はしない。品質に対してのリスクは絶対に取りません。「安全とは具体的な危険が物理的に排除されている状態」だと考えています。検査や生産する場所と工程のチェック、適切な表示により正しい使用を促すことなどが食品の安全を担保するのに必要だと考えています。また「安心は商品を使用する方の心理的な判断」で安全な状態の継続と記録や情報開示によって構築される信頼を基としています。
釣八には食品サプライチェーンの一員として、川下の流通の皆さまへ川上の生産者の皆さまから引き継いだ安全・安心を商品とともに間違いなくお届けし信用の連鎖を果たす責務があると考えているのですね。
供給体制確保に向けた取り組み
次は少し具体的なお話を聞いていきたいと思いますが、まずは供給体制を確保するための取り組みとして工場監査に関して伺いたいと思います。生産委託先工場の選定はどのようなプロセスで行っていますか。
中国でのケースですが、商品の加工内容を企画営業の社員が決めて大連にいる現地駐在員に委託可能な工場をリストアップしてもらいます。その能力や委託コストなど条件に合わせて絞り込み、まず駐在員が工場を見ます。その際に評価のポイントは予め決めておいてそれをパスした工場でサンプル生産を行いその後直接訪問して本生産に入る前に工場監査を行います。ほかの国でもほぼ同様ですが、工場監査の内容は130項目あまりチェック表に従って行います。修正可能な点は現地での改善を施してもらい再度確認してOKを出していきます。大きな問題が発見されたケースでは委託を取り止めています。現在の委託先はすべてこうしたやり方で工場監査を実施しました。開始してから9年ほど経ちますが、年間20工場ほどの監査を実施してきました。新型コロナウィルス感染症流行の影響で2020年の年初からストップしていますが流行が沈静化して再開できれば2年ごとの巡回監査を含め実施する計画にしています。
水産品流通で求められる検査体制
検査体制に関して簡単に教えていただけますか。
食品衛生法に基づく輸入食品の検査は次のように行われます。すべての食品輸入者は食品衛生法の規格基準に適合するものか審査を受けるため輸入の都度届出が必要です。審査の後、加工品や市販用途ものは輸入者の自主的な衛生管理の一環として指導検査(自主検査)が求められています。モニタリング検査は、多種多様な輸入食品について、食品衛生上の状況について幅広く監視し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を講じることを目的として、国が年間計画に基づいて検査を実施します。命令検査は自主検査やモニタリング検査、国内での収去検査等において多くの違反が判明するなど、法令違反の可能性が高いと見込まれる食品等について、輸入者に対し、輸入の都度命じる検査です。このほかに食品衛生法に基づき国内で流通するすべての食品等の安全性を確認するため保健所の食品衛生監視員が店舗等から食品を収去して検査を行っています。水産物の輸入においては衛生状態や国内で使用が認められない添加物検査と養殖されたものでは抗生物質、合成抗菌剤の残留検査が中心に行われています。
正確な食品表示への対応
次に食品表示に関して話をお聞きします。食品表示法によれば水産物に関しては大きく生鮮食品としての取扱いと加工食品としての取扱いに分けられると思います。釣八の場合多くのものは原料や一次加工された状態での流通だと思いますので大半は生鮮食品として取扱われるのだと思いますが。
加熱や調味処理を行い加工食品として取扱われるものが1割以上あり対応しています。加工食品は生鮮食品として求められる名称、原産地、養殖・解凍の別などの表示に加えて原産地ではなく原産国を表示、原材料名と添加物の表示、アレルゲン表示も必要となります。また、小袋のスーパー店頭でそのまま販売されるような商品の場合は食品衛生法上冷凍食品に分類され一括表示の上に「冷凍食品」の表示と「凍結前加熱の有無」や「加熱調理の必要性」の表示も必要になり、容器包装リサイクル法に沿った包装容器の材質表示が必要になります。食品の安全な流通を実現するために正確な表示を行えるように取り組んでいます。