営業に聞く「釣八」

釣八という会社は

ー まず釣八の歴史を紐解いておきたいと思います。
釣見社長が独立をされて水産会社を設立したのが2001年ですから今年で22年目ということになります。最初は数人という規模で始まった会社ですが現在は約60名の社員の方が働いています。売上高は前期2022年3月期がピークで267億円計上しています。取扱いではイカと銀鱈・赤魚など北方凍魚、鯖や鯵・秋刀魚など青物類が多く、特にイカや銀鱈・赤魚の取扱いは業界でも上位シェアを占めていると思います。

大下

私は釣八ができた年、3月に会社が設立されたのですが、その年の9月に会社に入りました。独立した釣見社長に魅力を感じ、少人数で小回りの効く会社でこれまで業界には存在しなかったカテゴリーキラーとして自分の思い描いた方法で市場を開拓できるのが面白いと考えました。

小池

私は2005年に釣八に入りました。釣八の調達から販売まで自分が一人でこなす営業スタイルが自分に合っていると感じました。

加藤

私は2006年に釣八に入りました。当時の釣八銚子支店は開設間もない時期で新しい看板で取引先を開拓していく厳しさもあったのですが、やりがいを感じました。

特定魚種を良く知る営業が仕入先と販売先をつなぐ

ー 釣八では「特定の魚種を良く知る営業が、仕入先・販売先から信頼を得られる」と考えられていると聞きました。このあたり実際の体験としてはどうでしょう。

小池

私はもともと調達から販売まで自分一人でこなし、会社の看板を借りながらも自分が腕一本で稼いでゆくことに営業としての魅力を感じていたので、この言葉通り仕事ができれば良いなと考えています。いまの釣八の社員の人たちは、それぞれの魚種を得意にした人たちが多くいると思いますが、釣八に入社してから調達と販売を一人で担うことで仕入先・販売先の皆さまにそのように成長させていただいているのだと思います。

大下

学校を卒業して水産業界に入ってから30年近くになりますがずっとイカを担当してきています。最近では長い期間一つの魚種で商売を続けるということが商社や大手水産会社でもなくなっているように思います。そうした面で「特定の魚種を良く知る営業」集団が形作られているのが釣八の特色かもしれません。

ー 水産業界でも調達と販売は別機能として組織を作ることが普通になっていると思います。

大下

釣八では調達から販売までを一貫して、一人の営業や一つの同じグループですべてを完結してやりますね。

ー 釣八の営業の皆さんは仕入先からも販売先からも信頼を得られるようにとの気持ちが強いと感じますがそのポイントはどこにあるのでしょう。

加藤

仕入先にも販売先にも50:50の気持ち、どちらも大事でどちらに対しても頭を下げる気持ちでお付き合いをしています。お客様にもそうした釣八の姿勢をご理解いただける方が多いように感じています。仕入先も販売先も食品流通のパートナーとして取り組みをさせていただくことが理想とする姿ではないでしょうか。支店の社員には「仕入先があるからこそ仕事ができる」「仕入れがしっかりできないと販売先にも安定した供給ができないしご迷惑がかかる」と常々話しています。釣八のポジションは中間流通なので仕入れはとても大切にしています。

小池

それぞれの営業が仕入先との関係づくりをしていることも特色です。組織として調達機能を置いていないのでそうした形となるのですが、安定した調達のために営業社員それぞれが信頼関係を重視した買い付けを行っています。

大下

仕入先から販売先への流れが一方通行でないこともあります。相場変動の影響もあって仕入先が販売先になることも多くあります。仕入先の中国の加工業者に中国国内向け製品の原料供給をすることや国内でも同様のことが良くあります。

加藤

釣八には「我々が架け橋となって仕入先と販売先をつなぐこと(ニーズ・マッチ)これこそが使命である」という言葉があります。これは自分たちがいないと食品流通が繋がらないという意識を持って日々努力し、そのような存在になることを目指したいという意味だと理解しています。

優れた水産物を世界の海から日本へ、日本の水産物を世界へ

ー 釣八は優れた水産物を世界の海から調達していますし、日本近海の水産物を世界に輸出しています。

加藤

銚子支店では国内魚の集荷に優れた立地を生かして、青物類を中心に米国の缶詰メーカーや台湾・韓国の食品会社に輸出しています。長い歴史があります。

小池

輸入ではノルウェー・アイスランドから北大西洋で漁獲される鯖や赤魚を調達しています。

大下

イカは世界各地から輸入しています。釣八の営業はこれまで世界で産地開発をしてきました。

ー 加工品の取扱いはどうですか。水産品の高付加価値化のコーディネーターとしての役割も強化していきたいと。

大下

昔と比べれば原料だけでなく製品の取扱いが増えてきていますね。

加藤

私は社内でも積極的に製品分野に取組んでいる方だと思いますが、釣八にはメーカー機能が備わっていないので弱い分野でもあります。しかしながら新たな切り口での商材提案をしようとするとユーザーの利便性を追求して付加価値を付けていくことは避けては通れないと考えています。

営業が思い切り仕事ができる環境を整える

ー 釣八の多くの営業社員は、一人一人が的確に需給や相場を読むことができる経験と豊富なネットワークを持ち、調達から販売までこなせる個人力を磨き成長したいと考えているようですね。今日ご出席の皆さんのこれまでの話の中で、こうした営業の姿を追求したくて釣八に入社したというエピソードなども聞かせていただきました。こうした考えは釣八を強くしていく原動力だと思いますが、若い年代の価値観の多様化などが云われる中で、この先こうした考えをどのように維持していけば良いとお考えですか。

小池

一度は実績を上げられるようになっても、そのままあり続けることは環境が激変するこの時代には難しいことです。まずは個人個人が常に意識をして調達から販売にわたる営業スキルを磨くことに努力をすることが大事です。水産業界の中でも調達と販売を機能分化して別の組織にしている会社が増えてきていますが、釣八はそうではなく営業一人一人が調達から販売までこなすことによって成長し強みが発揮できていると思います。人財の育成方法から考えると私の部署では入社間もない社員はまずは販売員として仕事を始め、徐々に調達に仕事を広げていきますが、新たな商材への取り組みなどが調達から販売まで一貫して自分でこなせるようになるきっかけとなります。自分で調達するから販売の際に自信をもって商品の説明ができお客様の信頼が上がっていきます。そうした実体験が大事ですね。取扱い魚種を良く知り調達から販売まで一人で完結できる営業が集まり連携して販売できる組織が、お互いに切磋琢磨でき理想ではないでしょうか。

加藤

新たに入社する営業にはなるべく自分たちが経験してきたやり方を踏襲してもらっています。調達から販売まで一貫して担うことは新しい人にはハードルが高いことではあるのですが、高いレベルに早く到達するには自分たちが経験してきたことをストレートにぶつけていくのが良いと感じています。販売だけに仕事の範囲を限定して取り組ませても注文を取りデリバリーすることしか覚えられないので、自分で商材を見つけて新規に売り込むことに取り組んでもらっています。与えられて仕事をしているよりも自分で仕事を組み立てていくことで初めて稼げるようになってくるのではないでしょうか。最初はなるべく先輩の取扱い商材の範囲で新規商材を取り組ませるようにして大きなエラーにはならないようにしています。安全ネットをかける配慮は必要で大きなトラブルが起きないように注意しています。

小池

会社設立から20年過ぎて、営業は次世代育成がこれからのテーマになってきます。新卒採用を増やし計画的に人財を確保していくことを考えると、営業スキルの伝承を重視した方法だけでなく、並行して人事制度や教育の充実に取り組み、組織的な営業力も高めていく必要があると考えています。

オープンマインドが根付きナレッジシェアが進む環境

ー 釣八の特色として感じていることがあります。オープンマインドが広く理解されているしナレッジシェアの仕組みがうまく機能していると思います。

小池

営業全員の数字が常に公開されていてオープンですよね。プレッシャーでもありますがそれぞれの営業が「もっとやらないといけないな」というモチベーションにもなっています。また数字が伸びている人の成功事例を共有することにも繋がっています。とは言え頑張っていても数字が伸びていないような場面もあるもので、そうした面での配慮も大切です。

加藤

全社的にオープンな気風は釣見社長のキャラクターによる部分が大きいと思います。

ー それでは最後に釣八の魅力を皆さんの言葉で一言ずつお願いします。

大下

それほど少人数な会社ではないが、一人一人の営業が調達から販売まで担う自覚を持っているので、小回りが効くし、ニッチな分野も狙っていける。大手がやれないような分野に役割を見いだせるし、釣八だからこそ活躍できる場があって効率よく取り組めていると思います。

小池

やりたいと考えていることが反対されることはまずないように思います。主体性を持って取り組むこと。仕事へのやりがいを求めたい人にとって釣八は良い環境だと思います。

加藤

大手水産会社では調達部門があって販売部門があってということになるので、営業はこれを売ってきなさいと指示された商品をカタログ持参で案内するだけとなりますが、釣八ではお客様のニーズに沿って現在取扱いの無い商品を新規開拓することもできるし、営業の仕事としての範囲が広く自由度が高いので、人によっては難しいことと感じるかもしれませんが、自分の発想やアイデアを生かして仕事に取り組むことができる人にはやりがいがある会社だと思います。先輩も同じ経験をしているのでそのノウハウを活用しながら仕事を組み立てることもできます。

小池

営業のスキルを磨いて独立した人も多くいます。独立後も仕事のパートナーとして良好な関係が続きます。釣八は仕事にやりがいを求める人にとってその気持ちに応えてくれる会社だと思います。